自己破産の同時廃止事件と管財事件の違い
借金が返せない状態に陥ったとき、最終的な手段として自己破産を選ぶひともいます。
自己破産の手続きは、「同時廃止事件」「管財事件」の2種類です。
今回は、それぞれの手続きの違いや特徴を解説します。
自己破産とは
自己破産は、借金が返済できない場合に、裁判所を通じて借金の支払いを免除してもらう法的手続きです。
破産法第2条第1項では、破産手続きを「債務者の財産・相続財産・信託財産を清算すること」と定義しています。
自己破産の制度は、経済的に立ち直るための救済制度であり、すべての財産を失うわけではありません。
ただし、一定の制限や手続きがあるため、事前に知識を整理するのが大切です。
自己破産手続きの種類
自己破産の手続きは大きく分けて「同時廃止事件」「管財事件」に分類されます。
どちらの手続きになるかは、債務者の資産状況や借金の原因、その他の事情によって決まります。
同時廃止事件とは
同時廃止事件とは、破産手続きの中でも比較的シンプルなケースで選ばれる方法です。
具体的には、破産者に換金できるような財産がほとんどないと判断された場合に、この形式で進められます。
同時廃止事件の特徴は、以下の通りです。
- 破産管財人が選任されない
- 手続きにかかる期間が比較的短い
- 費用負担が少ない
- 免責許可の決定までの流れが早い
同時廃止事件になるか、管財事件になるかは、裁判所の判断によります。
管財事件とは
ある程度の財産を持っていたり、破産の原因に問題があると判断された場合は「管財事件」となります。
同時廃止事件とは異なり、破産手続廃止の決定は行われません。
裁判所が破産管財人を選任し、その人物が財産の管理・調査・売却を行います。
管財事件の特徴は以下の通りです。
- 破産管財人が選ばれるため、専門的な調査が行われる
- 手続き期間が長くなる傾向がある
- 予納金などの費用が高くなる
- 免責許可の前に「免責審尋」が実施される
基本的に、同時廃止事件よりも複雑になります。
一部の地方裁判所では、より簡易的な「少額管財事件」も運用されています。
同時廃止事件が選ばれる条件
前述のように、同時廃止事件か管財事件かの振り分けは、裁判所が行います。
ただし全国一律で定められた基準はなく、各裁判所の判断によります。
同時廃止事件として認められるための条件は、一般的に以下の3つが目安です。
- 20万円以上の価値がある財産を持っていない
- 33万円以上の現金を持っていない
- 免責不許可事由がない
「免責不許可事由」とは、借金をゼロにすること(免責)を裁判所が許さない理由です。
自己破産は、真面目に借金に悩んでいるひとを助けるための制度です。
ルールを破ったり、悪意がある行動をしたひとは、免責が認められない場合があります。
以下のような行動をしていると、免責が認められない可能性があります。
- ギャンブルや浪費で借金をつくった
- 嘘をついて借金した
- 財産を隠したり、ひとに渡してしまった
- 裁判所に出す書類にウソを書いた
- すでに他人から借りたお金を返さない前提で使った
- 破産の直前に一部のひとにだけ優先して借金を返した
- 帳簿や書類をわざと捨てたり、隠したりした
免責不許可事由がなく、かつ資産に関する基準を満たしていれば、同時廃止事件が選ばれます。
管財事件が選ばれる条件
基本的には、同時廃止事件に該当しないものは、管財事件として処理されます。
自宅や車など、一定の資産を所有している、もしくは免責不許可事由がある場合は基本的に管財事件となります。
手続きにかかる費用の違い
自己破産における手続き費用は、どちらの形式になるかによって大きく異なります。
【同時廃止事件】
裁判所に支払うお金は1〜3万円程度です。
具体的には、収入印紙や郵便切手などにかかります。
また、自己破産の手続きを弁護士に依頼した場合は、弁護士費用も必要です。
弁護士費用は、20〜30万円前後です。
合計で、30万円程度が目安になります。
【管財事件】
裁判所に支払うお金は、こちらも1〜3万円程度です。
管財事件の場合、破産管財人(裁判所が選ぶ専門家)の報酬として支払う予納金が発生します。
最低20万円からで、財産が多かったり調査が複雑になったりすると、50万円以上かかる可能性もあります。
弁護士費用は、30〜50万円前後です。
管財事件は手続きが複雑で、時間もかかるため、弁護士費用も高くなりがちです。
合計は、50〜100万円程度が相場になります。
弁護士に依頼するメリット
自己破産は、制度上、弁護士なしでも手続きを行えます。
しかし内容が複雑であり、ミスがあれば自己破産ができないリスクもあるため、基本的には弁護士に相談するのがおすすめです。
自己破産の手続きを弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
- 書類作成や財産評価を正確に行ってくれる
- 裁判所とのやりとりを代行してくれる
- 同時廃止事件として進められる可能性が高まる
- 債権者からの取り立てが早期に止まる
手続きが複雑になりがちな管財事件では、専門家の関与が欠かせません。
まとめ
同時廃止事件は、手続きが簡単で、費用も安く済みます。
一方、管財事件は財産や調査が必要なケースで、手続きに時間とお金がかかります。
どちらの形式になるかは、財産状況や借金の原因などによって変わります。
自己破産を検討している場合には、まずは弁護士に相談し、自分に合った手続き方法を確認するのが大切です。
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代表者名 | 宮路 真行(みやじ まさゆき) |
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所属団体 |
鹿児島県弁護士会(登録番号 48353) NPO法人夢・あこがれ 理事 社会福祉法人鹿児島いのちの電話 評議員 |
沿革 |
2009年 鹿児島大学 卒業 2012年 鹿児島大学法科大学院 修了 2012年 司法試験合格 2013年 弁護士登録 2019年 宮路法律事務所開設 |
事務所概要
事務所名 | 宮路法律事務所 |
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